自己アセスメントの手順を確認します
1、身体的な疾患、加齢を考える
2、精神的な疾患を確認する
3、心の問題を確認する
4、生活環境を考える
5、ライフステージの発達課題を考える
6、自我機能から考える
<5、ライフステージの発達課題を考える>
人の心理は、周囲の人々との関係性を通して成長していきます。年代に応じて付き合う人や環境が変わりますが、そういった人生の区切りを節目で区切ったことをライフステージと呼びます。
入学、卒業、就職、結婚、出産、子育てなど様々なライフステージがありますが、その時々に向き合うべき課題を「発達課題」といいます。その課題をクリアできなければ発達危機(クライシス)となり、困難を抱えることがあります。例えば20歳~39歳くらいまでであれば異性、同性問わず特定の人と親密な関係を築くのが発達課題となり、クリアできれば伴侶や生涯の友、働きがいのある仕事や職場を得ることができます。しかし発達課題をうまくクリアできなかった場合は孤独を抱えることになります。
発達段階で有名なのはエリクソンが提唱したものになります。(参照は以前の記事、「理論で向き合う親子関係」シリーズの②、③をご覧ください)
現在の発達心理学・臨床心理学では母胎内にいる9カ月も含めて8段階の発達課題が提唱されています。
胎生期:マイナス9カ月
発達課題=安定した環境、十分な栄養、母体の健康、胎外とのコミュニケーション。
「胎教」などという言葉もありますが、お腹の中の赤ちゃんに話しかけてコミュニケーションを取ることで親子の絆が深まるとされています。
乳幼児期:0~6歳
発達課題:第一段階の親離れ、母親から離れて友達と遊べる。
具体的な行動:授乳、排泄の制御、更衣、探検、道具の使用など。
クリアすることで得られるもの:無条件の愛情を注がれることにより希望を手にすることができ、自分の意思が芽生えることによる自主性、積極性を身に付けることができます。
クリアできないことによる弊害:根本的な不信感や恥(排泄の失敗など)、罪悪感などが芽生えます。
学童期:6~12歳
発達課題:ギャングエイジ(集団のメンバーでの集まり、行動)、同性との友人関係を深める。
具体的な行動:学業、スポーツ、集団行動など
クリアすることで得られるもの:勤勉性、有能感、自信、仲間意識、集団での立ち位置、損得勘定のない仲間など。
クリアできないことによる弊害:劣等感、孤立感など。
思春期:12~18歳
発達課題: 異性に対する性的関心、第二段階の親離れ、自己同一性(自分とは何者か)の獲得。
具体的な行動:学業、スポーツ、趣味、行事、進路選択など。
青年期:18~25歳
発達課題:自己同一性(自分とは何者か)の獲得。
具体的な行動:学業、仕事、恋愛、趣味など
思春期、青年期を通して、
クリアすることで得られるもの:人生の目的や目標、恋人、仕事の目的や目標、失敗・挫折・喪失などマイナスのイベントの捉え方、立ち直り方など。
クリアできないことによる弊害:自分が何をしたいのか分からない、思いやりの欠如、対人関係での不都合など。
成人前期:25~35歳
発達課題:仕事や家庭を持つ
具体的な行動:就職、転職、結婚、出産、子育てなど。
クリアすることで得られるもの:愛など。
クリアできないことによる弊害:孤独など。
成人後期:35~60歳
発達課題:責任の重さ、子どもや後進の育成、身体的な衰えを受け入れることなど。
具体的な行動:子育て、部下の教育など。
クリアすることで得られるもの:世代性(生殖性)、世話など。
クリアできないことによる弊害:孤独など。
老年期:60歳~
発達課題:社会的責任、大切な人の喪失体験、身体的な衰えを受け入れることなど。
(参考:「育児室からの亡霊」ロビン・カー・モース、メディス・S・ワイリー)
時代の変遷とともに、また環境的に必ずしも上記の通りとは限りませんが、一つの目安として自分を客観視するツールとして知っておいても良いと思います。(およそ「理論」と呼ばれるものはそういう風に使うものなのでしょう。)
例えば27歳くらいで定職に就いていないのであれば、「「発達課題的には」クリアしていないわけなので、それは気分が落ち込むよなあ」、というように自分自身を見つめてみてください。自分を客観視することで少し気分が落ち着いてくると思います。
発達課題がクリアできなかったからダメ、ということでもありません。ただ、ふと人生を振り返った時に、「ああ、あの時あの課題から逃げてしまったから苦労していることはあるな」と思い出し、立ち返ってみることで何かが変わることもあるかもしれません。
古い話ですが、私は25歳くらいの時に無職でどん底の日々を送っておりました。ここから自分の人生を好転させるためにどうしたらよいかと日々考えており、過去を振り返ることも多くありました。その中で、少なからず「リーダー」的な立場に指名された場面でその仕事をおろそかにしていたことを思い出しました。自分には向いていないからという自信の無さと、リーダーという立場を利用して傲慢にふるまってしまいそうな自分がいたからです。集団の中ではなるべく目立たないようにしていました。学童期の「集団行動」での課題をクリアせず、自分に自信がなかったのだと気づきました。
当時とある資格試験のための講座に通っていたのですが、ある時そこで飲み会を行うことになりました。その時に私は幹事に立候補しました。苦手なリーダーシップを発揮する場面であり、集団に対する貢献が一番できる立場だと考えたからです。学生時代、指名された(先生もクラスメートも何かしらの期待をしてくれていたということでしょう)にも拘らず役を全うしなかった自分の過去を清算するつもりで臨みました。「たかが飲み会の幹事くらい」とお思いでしょう。しかし私にとっては重要なターニングポイントのように感じたのです。店の予約や人数調整はもちろんのこと、皆さんが楽しく、気持ちよく過ごせるように気配りをし、大変満足をしてもらいました。この時の充実感は今でも大切な記憶として残っています。
その後図らずも学習塾の一つの教室を任される立場を11年送りましたが、あの時の幹事の経験は大きな自信になっています。傍から見ればただ飲み会の幹事をやっただけ、かもしれませんが、私にとっては学童期にクリアできなかった課題をクリアした充実感が自信に繋がっていたのです。
何が言いたいかというと、理論的な発達課題は参考程度にしてください、ということです。そしてそこにピンとくるものがあったら、昔に戻って発達課題をクリアすればいいのです。周りから見れば小さなことでも、あなたにとっては大きな一歩となっていることでしょう。自分のペースで、過去やり残して今に影響しているものはないかを探し、克服したいと思ったらすればよいのだと思います。
次回は3月30日配信予定です。
<本コーナーの対象と目的>
このコーナーでは、心身の不調を感じている方が自身の状態をセルフチェックするための手法をお伝えします。これからお話するのは、これまでごく一般的に(「一般的」の定義も難しいですが)生活してきたが心身の不調を感じている、18歳以上の成人の方を対象とします。
その方々が自身の不調の原因を自分で探るための心理学的な知識、自分と向き合い心を軽くするためのキャリア理論、心理学的な理論などをお伝えし、「自助」ができる手段を示すことが目的です。
あくまでも環境や役割の変化をきっかけに心身に不調をきたしている方が、自分でその原因や状態を分析する「自己アセスメント」の手法と、理論や考え方を身に付けて心身の不調と向き合うための「自助」をアシストすることを目的としますので身体的、精神的疾患が疑われる場合は必ず医療機関を受診してください。


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