「では、ここで改めて東京都の高校入試についておさらいしておきますね。
東京都の高校入試は都立と私立に分かれます。

都立には推薦入試と一般入試があります。
推薦入試は内申点と当日の小論文もしくは作文、面接、集団討論の合計点で決まり、学力試験はありません。ここで使われる内申点は「素点」といわれるもので、単純に9教科の合計を足し合わせたものになります。
一般入試は「学力検査に基づく選抜」といわれるものです。
内申点と国数英社理の5教科の学力試験、スピーキングテストのスコアの合計で競われます。ここで使われる内申点は「換算」といわれるもので、音楽、美術、技術家庭、保健体育のいわゆる「実技4教科」は足し合わせて2倍します。そうするとオール5だった場合の「換算内申」は65になります。皆さんも、1学期の成績で計算してみてください」

あらかじめ持ち物としてアナウンスしてあった電卓を保護者のほとんどが取り出した。子どもたちはスマホの計算機アプリを起動させる。各々が換算内申を出した様子を見てから妙恵は続けた。
「では、ここからが少しややこしいのですが、都立一般入試は内申点が300点、当日の学力点が700点、スピーキングテストが20点の1020点満点で競われます」

「換算内申を300点満点にする必要がありますね。例えばオール3だったら39/65。それを300点満点にするので300を掛けてください」
電卓をたたく音がしばらく続く。一人の保護者が手を挙げた。
「すみません、うちの子換算内申が41なんですが、小数が出る場合はどうしたらよろしいですか」
「その場合、小数点以下は「切り捨て」で計算します」
質問した保護者は妙恵に礼を言って子どもに「切り捨てだって、残念ね」と言いながら親子で苦笑した。
「ここで気づいたと思いますが」
妙恵が一同を見回す。
「実技4教科に関しては2倍になりますので、この辺りが得意な生徒さんは頑張って成績上げましょうね。期末テストまでまだあと1月ありますから」
「そうね、せめてテストだけでも頑張ってもらわないと」
保護者があちこちで声を発する。
「実技教科は才能もありますからね。うちの子は体育が苦手なので、何としてもペーパーテストで点取ってもらわないと」
「体育苦手なのは親譲りだから」
この話題になると定番の親子のやり取りが繰り広げられ会場が和む。
「私も美術だけはどうしてもダメでしてね」
福永が口をはさむ。
「夏休みに美術の先生が個展を開いたのを見に行って、媚びを売って4が付きましたよ」
まあ、と保護者が声を上げ笑いが起こる。福永は典型的な「堅物」のイメージがある小男で、内申を稼ぐために教師に媚びを売る姿など想像ができない。そのあたりのギャップも空気を和ませた。
「それに私の時代は相対評価でしたから」
そうそう、と保護者が頷く。子どもたちは首をかしげている。福永は子どもたちを見回しながら説明した。
「通知表の5が何パーセント、3が何パーセント、って定員みたいなのが決まってたの。だからどんなに頑張っても学年全員が100点でも一定数必ず1になる人が出るっていう仕組み。受験に必要な成績が決まる3年の2学期なんかみんな頑張るでしょ。だから平均点が80点とかになることもざらにあった。そうなると80点取れても通知表は3とかね」
信じられない、という声が生徒たちから上がる。
「今は絶対評価になっているから、極端な話全員が100点の場合全員に5を付けてもいい。ある意味周りを気にする必要がなく、自分のベストを尽くせば報われる仕組みだね」
これには保護者が大きく頷いた。
「さて、ここまでが内申点の計算でした。では次に当日の学力試験について説明しますね」
妙恵が説明を続ける。
「多くの都立高校では国数英社理の5教科の試験が行われます。これを700点満点に換算します。つまり1.4倍ですね。都立多摩技術高校などは数学と理科を1.5倍するなど傾斜がかかっているところもありますので注意が必要です。個別に志望校の相談をしますので気になる方は後ほどご質問ください。そして先ほどの300点満点中何点という内申点とスピーキングテストを加えた1020点で合否が決まるという仕組みです。一般に公開されている入試基準一覧はスピーキングテストを抜いた1000点満点の基準点が多いので、我々も今後は1000点満点基準で合格可能性を追いかけていきます」
「その、スピーキングテストというのは・・・」
保護者が手を挙げる。
「都立入試の英語の試験にリスニングがあるように、スピーキングテストも英語の点数に含まれて、つまり英語が120点満点になるということなんでしょうか」
妙恵が答える。
「そうではないんです。英語が120点満点になるわけではありません。分かりづらいですよね。あくまでも学力試験700、内申点300、プラススピーキングテスト20点の1020点となります。スピーキングテストつまりESAT-Jは別個で行われます。先ほどお伝えした通り今年は11月24日ですね。結果は来年の1月7日から見られます。ESAT-J自体は大問4つで構成されて100点満点なんです。それをA~Fの評価に換算します。100~80点をA評価で20点、65~79点をB評価で16点、50~64点をC評価で12点、35~49点をD評価で8点、1~34点をE評価で4点、0はFで0、というように点数化されます」
「そういうことですね、分かりました。ありがとうございます」
スピーキングテスト、通称ESAT-Jは2022年よりスタートしたもので、いろいろ運営上の課題は議論されているがスピーキング力も入試で評価されるようになっている。
「では、次に私立高校について説明します」
妙恵は説明を続けた。
次回は10月23日更新予定です。


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