【小説・サクラサクまで25】裕香の進路選択⑥ 大学の学部ってどんなのがあるの?

小説・サクラサクまで

「じゃ、大学の学部がどんなものがあるのか紹介していくね」

福永より先に口を開いたのは妙恵だった。「さっき「学歴フィルター」なんていう言葉が出たけど、色々な考え方があっていいと思うけど、私は偏差値に関係なく自分が勉強したい学部がある大学に行くほうがいいと思うんだ。そのうえで、偏差値順にチャレンジしていくのはいいと思うけど」

「まず自分がどんな学問に興味があるかが分からないんですよ。逆に、どんな学部があるかを教えてもらえたら、興味持てそうなのが見つかるかも」

「そうね。じゃあ話していくけど、大学で学ぶ学問は多岐にわたるんだけど、大きく分けて学部は4つの系統に分類できるの」

「4つ? 理系と文系の2つじゃなくて」

「「人文科学」「社会科学」「自然科学」、そのいずれかにも分類できない、もしくはいずれかとも関連がある「総合」。ざっくりいうと人文科学と社会科学、総合の大半が「文系」、自然科学と総合の一部が「理系」って言われているものだと考えていいよ。

人文科学」は主に歴史や文化などを通して人間について研究するもので、心理学、哲学、文学、語学、歴史学、地理学、文化学などがある」

「よくネットなんかで「文学を勉強しても社会で役に立たない」とか言われている、あれ系統ね」

「そう、あれ系統(笑)。「社会科学」は実生活においての身近な学問で、経済学、経営学、商学、社会学、法学、政治学、国際関係学、社会福祉学などがある」

「経済学とか難しそう・・・」

「「自然科学」は人体や自然、理学や工学に関連するいわゆる「理系」学問で、医学、歯学、薬学、看護学、保健医療学、理学、工学、農学、獣医学、建築学などがある」

勉強したことがわりと将来につながる感じですか?」

「文系学部よりは関連しているね。そして「総合」には家政学、生活科学、人間科学、スポーツ科学、教育学、芸術学などがある」

「いっぱいあるなあ。勉強しても将来何に役立つか分からない学問もあるんですかね。例えば就活で苦労するとか。それこそさっき言ってたけど、文学部は実生活で役に立たないと思われているのかしら」

「人それぞれ考えがあっていいと思うよ」

これには福永が答える。一応、社会人経験がある人だ。「ただ、文学といっても事実に基づいた題材であれば歴史や文化を知ることにもなるし、たとえ想像(創造)の世界だって、人が「こうありたい」とか「人を理解したい」という願望が込められているはずなんだ。つまり想像(創造)の世界を学ぶってことは人間について学ぶってことで、社会が人間の営みで成り立っている以上意味のない学問とは、オジサンは思っていないぞ」

「ちょっと、良いこと言うじゃん」

「「ちょっと」だけ余計」

「経済学部とか経営学部とか商学部の違いが分からないんですが」

「経済をベースにしているのはどの学部も共通。経済学は割と研究っぽいかな。文系だけど数学を使うのが注意点。経済の知識を会社経営に役立たせるのが経営学部、実際に物を売るための工夫や売り方なんかを考えるのが商学部。本当に簡単に言っちゃうと、ケーキを作るための原料の流通とかそれが日本国や世界にどんな経済的な影響を与えているのかを考えるのが経済学部、ケーキ屋さんを経営するために必要なことを知るのが経営学部、ケーキがどうやったら売れるかを考えるのが商学部って感じかな」

「う~ん、それでいくと私は商学部に興味があるかも(笑)」

「そうそう、そうやって比較をしながら興味を炙り出していくといいかもよ」

福永が合の手を入れる。

「理系だと生き物に関わるものとその他に分けられそうですか?」

裕香の質問に妙恵が答える。

「そうね。医学部、歯学部、薬学部、看護学部、獣医学部は生き物を扱う。でも受験で必要なのは意外と化学と物理だから選択には注意してね」

「ものを扱う理系は研究とかモノづくりっていうイメージがありますけど、それぞれ学部でどんな違いがありますか?」

「理学部は研究メイン。数学、物理、化学、生物、地学なんかを深く学んで、調べて、新たな価値を作ろうとしている。それで理屈が分かったものを実際に作るのが工学部っていう感じかな。これも簡単にいうと、「宇宙に行きたい!」と思ったときにロケットを作るための理屈を考えるのが理学部実際にロケットを作るためにどうしたらいいのかを考えるのが工学部って感じかしら」

「日本はモノづくり得意だから工学部は就職率よさそうですね」

「そうね。理学部は大学院進学率が高くて、工学部はメーカーへの就職も多い。当然だけど専門性は問われるでしょうね」

「もう少し色々調べてみないと、って感じかな」

素直な感想だったが、少しずつだがこれまでよりは前向きな気持ちになれてきた。

福永が受け止める。

「そう。今挙げたのは一例だし、学部の中でも学科っていってさらに専門性が出てくるんだ。それを調べてみるのもいい。いずれにせよどの学部・学科も人間や社会の営みを研究するものだから、「勉強しても意味がない」学問はないよ。ただし将来のやりたいことによっては大学進学の時点で学部をしっかりと選ぶ必要がある。例えば医者になりたいのであれば医学部に、歯科医になりたいのであれば歯学部に進学して専門的な知識を身につけて資格を得なければいけない。自分が将来やりたい仕事に「資格」が必要なのかを調べて、それが学べる大学はどこかということを知るのもいいと思う。特に専門職を目指す場合は社会に出てからそれがやりたくなっても学び直しが必要となったり、そもそも大学で必要な科目を勉強していないと目指せなかったりするから、高校卒業後の進路は一度真剣に考えてみることをお勧めするよ」

「漠然としていた大学での学びが少し分類できるようになってきた。ありがとうございます。もう少し色々な学部とか、それにつながる仕事とか、自分でも調べてみます」

裕香はそう言い、頭を下げた。

それから福永と妙恵から参考になる本やネットのページを教えてもらい、その日は解散となった。

帰り道、少し頭の中が整理できたようで気持ちが軽くなっていた。

それにしても、カズちゃん(東松原 一絵)は色々なことをよく考えていたんだなあと改めて感心した。ああやって自分の将来を真剣に考え、学部を考えている同級生に素直に感心した。私はまだまだこれからだな、と思うと、自分に成長の余地があるような気がしてワクワクしてきた。

そこに、スマホが震えてLINEの通知を知らせた。

テニス部の同学年双葉ちゃんからだった。

「お疲れ。明日のミーティングなんだけど、池ノ上さんはじめ部活にやる気ない子たちの対応について話していい? そろそろ先輩たちが怖い」

文面を読んだ瞬間に一気に現実に引き戻された。

そうだ、この問題もあったんだ・・・。

裕香は深くため息をついて空を見上げた。

秋の空は一等星が一つしかないと昔理科で教わったけど、確かにずいぶん寂しい夜空だった。

 

<次回に続く>

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