<前回までのあらすじ>
裕香は自分の進路について福永について相談すべく土曜日の授業後に居残っていた。偏差値50くらいの「真ん中くらい」の大学に入れればいいかな、という裕香に、妙恵は口を挟んだ。
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「「偏差値50が真ん中」か」
これまで黙って聞いていた妙恵が初めて口を開いた。
「偏差値50が真ん中って考えているみたいだけど、ちょっとそこは訂正しておいていいかしら」
「え、違うの?」
驚く裕香に、妙恵は紙とペンを取り出して何かを書き始めた。
そして説明を始めた。
「まず偏差値っていうのは試験の平均を基準にした数値のことね。試験を受けた集団全体、つまり「母集団」の中での立ち位置を表している」
「はい」
「要するに試験を受ける母集団が変わると偏差値も変わるの。裕香さんは今、高校受験の時にV模擬が出している偏差値の55くらいの高校に通っているよね。だいたい都内の中学生の真ん中よりちょっと上くらいの子が集まる高校だと思う」
「ザ・平均値(笑)」
「都内の中学生のほとんどが高校に進学するから、ほぼ全員が受ける模試での偏差値だから、高校受験で偏差値50っていうと都内の中3の真ん中くらいってことになる。

でも大学受験となると、そもそも高校を卒業したら働く子もいるわけね」
「それって、もしかして・・・。その子たちの偏差値は入らないってこと?」
「そういうこと。つまり高校受験と大学受験では「母集団」が変わるの。全国の大学進学率は約58%(2023年度学校基本調査)だから、大学進学を目指している人の中での偏差値50ってどういう数字になると思う?」
「そもそも大学受験のための勉強をしている6割の中の偏差値50、ってことはけっこう高い?」
「そう。全国の高3生の上から25~30%くらいじゃないかしら。だから大学受験における偏差値50は全然真ん中とは言えないんだ」


「それは知らなかったよ~。じゃあ偏差値50で安心してちゃダメじゃん」
そう言いながら裕香は机に突っ伏した。大学受験の難しさにうすうす勘づき始めたのだ。
「あ、でも・・・」
と顔を上げて妙恵を見る。「高校で定期的にやらされる模試だと今のところ偏差値65くらいなんですけど、このまま頑張れば大丈夫ってことですか? ほら、ソーケージョーリ(早慶上理と言いたいらしい)とか行けるんじゃない?」
「残念なお知らせなんだけど、学校でやっている模試ってベネッセさん?」
「おそらく」
「でしょうね。進研模試っていうんだけど、あれだと若干偏差値が高く出るんだ」
「え、なんで?」
「あれは高校生しか受けていない模試なの。でも大学受験は、同年代の子たち以外とも戦わなくちゃいけないわけ」
「浪人ってやつかな? パパが浪人して大学入ったって言ってた」
「そう。大学受験に向けた偏差値は、浪人生も受けている模試で見た方がいいの。河合模試とか駿台模試とかいろいろあるから、そういうので本当の立ち位置を知ったほうがいいわ」
「そうか、それがさっき妙恵先生が言った「母集団の違い」か。学校の模試だと全国のその模試を受けている高校1年生の中での順位が分かるだけなんだ」
「そういうこと」
「偏差値については分かりました。ソーケージョーリって確か偏差値70近くあるって聞いたことがあるけど、それってすごい数字なんだなってことが理解できました。でも、あとはどうやって大学を決めるかですよね。高校の時は模試の結果から同じくらいの偏差値の高校を選んだけど、大学もそれでいいの?」
これには久しぶりに福永が答えた。
「大学は興味のあることを学ぶところだからね。偏差値も大事だけど、自分が何をやりたいのかを考える、つまり学部や学科から考えた方がいいと思うよ」
「そこなんですけど~」
裕香はまた大げさに悩んでいるそぶりを見せる。「そもそもどんな勉強があるのか分からなくて・・・」
「たくさんあるからね。じゃあ、大学にはどんな学部があるのかをざっくりと見ていこうか」
今度は福永が紙に何かを書き始めた。
<続く>


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